曼荼羅アーティストの大迫弘美です。
主にボールペンを使って曼荼羅アートを描いています。
原画「解く鍵」
曼荼羅は、ただの美しい模様ではありません。
そこには「幾何学」という秩序があり、宇宙の構造や精神世界の象徴が込められています。
本記事では、曼荼羅と幾何学模様の関係を深掘りしながら、その意味や歴史、現代における魅力を紹介します。
また、神聖幾何学模様「メタトロンキューブ」の描き方のほか、描くことによる癒しの効果や教育・芸術分野での応用についても触れていきます。

この記事で分かること
- 幾何学模様とは?
- 神聖幾何学と曼荼羅の共通点
- メタトロンキューブの描き方
- 図形で読み解く曼荼羅の構造
- 現代に広がる曼荼羅と幾何学の魅力
- 研究により明らかになる曼荼羅のこれから
曼荼羅と幾何学模様のつながり
幾何学模様とは?―規則と調和が生み出す美しさ

幾何学模様とは、線や図形を繰り返すことで生まれるパターンです。
代表的なものに、円・正方形・三角形・星形などがあり、数学的な規則性に基づいた美しさが生み出されます。
古代から建築や装飾、宗教的な儀式にも使われてきました。
曼荼羅にもこの規則性が活かされていて、無限の広がりや統一感を象徴しています。
幾何学模様が持つ繰り返しと対称性は、見る人の心に安心感を与え、自然との一体感を感じさせる要素でもあります。

曼荼羅の中の幾何学―中心から広がる宇宙の象徴
原画「フラクタル」
曼荼羅は、精神世界や宇宙の構造を可視化するだけでなく、祈りのかたちを視覚的に表現したものでもあります。
その配置や構造には、調和、浄化、悟り、感謝といった人間の内面からの祈りの意図が込められます。
宗教儀式で曼荼羅が使われるのも、視覚的象徴を通して神仏とのつながりを強め、悟りをひらくという願いを届けるためです。
曼荼羅の最大の特徴は、中心から外へと拡大する構造です。
これは「宇宙の中心から世界が生まれる」という思想を表しています。
仏教やヒンドゥー教では、曼荼羅を通じて宇宙の成り立ちや心の内面を視覚化しています。
中心には仏や神が描かれ、その周囲に菩薩や守護神などが配置される構造は、精神世界の階層構造を示しているといわれています。
このように幾何学的な構造は、宇宙の秩序を視覚的に表す役割を果たしているのです。

神聖幾何学との共通点―フラワー・オブ・ライフとの関係
神聖幾何学は、宇宙や生命の根本原理を幾何学的図形や比率で表そうとする思想体系です。
その歴史は古代文明にまで遡ります。
Wikipedia. – Ray Flowers, CC BY-SA 3.0, httpscommons.wikimedia.or
例えば、古代エジプトのアビドス神殿には「フラワー・オブ・ライフ(生命の花)」と呼ばれる、重なり合う複数の円から成る神聖幾何学模様の石刻が残されています。
この模様は宇宙の調和や生命の連続性を象徴し、世界各地の神秘思想やスピリチュアルアートに大きな影響を与えています。
また、古代ギリシャではプラトンが「プラトン立体」と呼ばれる正多面体を宇宙の根本形状と捉え、数学と哲学を融合させました。
古代ギリシャの哲学者プラトンが、宇宙を構成する元素と結びつけた5つの正多面体のこと。
正四面体、正六面体(立方体)、正八面体、正十二面体、正二十面体の5種類あり、それぞれ火、土、風、空、水と対応するとした。
これらの図形は秩序と美の象徴であり、西洋建築や芸術の基礎となりました。
By LBM1948 – Own work, CC BY-SA 4.0, httpscommons.wikimedia.orgwindex.phpcurid=125424503
さらに、イスラム世界では宗教的な理由から偶像崇拝が制限され、代わりに複雑で精緻な幾何学模様が発達しました。
モスクの装飾やタイルに見られるこれらのパターンは、神聖幾何学の概念を視覚化したものであり、神の無限性や秩序を表現しています。
フラワー・オブ・ライフや曼荼羅に共通するのは、中心から繰り返す円や図形が重なり合う構造で、これは宇宙の調和や生命の連続性を視覚的に示しています。
これらの図形は、東洋の曼荼羅やインドのヤントラにも見られ、精神世界と幾何学が深く結びついていることを示しています。

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神聖幾何学模様「メタトロンキューブ」を描こう
この章では、神聖幾何学模様の「メタトロンキューブ」の描き方を紹介します。
引き続き、曼荼羅とは何かについて知りたい方は次章「図形で読み解く曼荼羅の構造」へお進みくださいね。
メタトロンキューブとは?図形に宿る宇宙の秩序

メタトロンキューブは、フラワー・オブ・ライフから派生する神聖幾何学模様の一つで、13個の円とそれらを結ぶ直線で構成されています。
プラトン立体を内包する構造でもあり、宇宙の法則・バランス・調和を象徴するといわれています。
名前の由来である「メタトロン」はユダヤ神秘主義に登場する天使の名で、図形そのものが守護・知恵・宇宙意識の象徴として多くのアートやヒーリングに使われています。
実際に描いてみよう!メタトロンキューブの作図手順①
準備するもの
- コンパス
- 定規
- 分度器
- 鉛筆・消しゴム
- 白い紙

- 用紙の中心から60度ごとの線を引きます
- 線の中心に円を書きます(半径は任意)


- ①の線に印をつけます
②で書いた円の半径×2のところ→赤丸、中心から赤丸まで×2のところ→黄丸 - ③で印した赤丸を中心に、②と同じ半径の円を加えます

- ③で印した黄丸を中心に②と同じ半径の円を加えます
- 赤丸を三角形で繋いで、六芒星を書きます

- 赤丸を六角形で繋ぎます
- 外側の円の中心=黄丸を三角形で繋いで、六芒星を書きます

- 黄丸を六角形で繋ぎます
- 対角上の黄丸を繋げます
実際に描いてみよう!メタトロンキューブの作図手順②
メタトロンキューブは、13の円とその中心同士を結ぶ線でできています。
線がフクザツになっていますが、図を見てゆっくりと描き進めましょう。

- 外側の円と繋がっていない円を結びます。
線は2本ずつあります。 - 以下⑯まで、⑪と同じように線を2本ずつ描き加えます



①で描いたガイド線を消して完成です。


図形で読み解く曼荼羅の構造
中心と円―曼荼羅が語る宇宙の秩序
原画「安寧」
曼荼羅の中心は「真理」や「仏の世界」を表し、そこから外に向かって広がる同心円が、宇宙や人間の心の階層を象徴します。
円は永遠や調和を意味し、曼荼羅において最も重要な図形の一つです。
この同心円の広がりは、「悟り」へ至る精神の道筋や、世界を包み込む慈悲の広がりとも解釈されます。
よく知られているのが「胎蔵(界)曼荼羅」ですね。
円という形は世界の宗教や文化で特別な意味を持ち、曼荼羅の世界でも中心的な役割を担っているのです。

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四角形・三角形・蓮の花の意味
By Peripitus – Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3505020
曼荼羅の構成には、四角形=地、水、火、風のエレメントや三角形=神聖性・上昇などが組み合わされます。
四角は安定と世界の四方を、三角はエネルギーの上昇や女性性・男性性の象徴とされ、蓮の花は精神的な目覚めを象徴します。
蓮の花びらの形は、仏の清らかさをも表現しています。
曼荼羅アートでも蓮の花びら模様は多用されます。
私たちの心の内にある仏性とつながり、清らかな心を持ち続けるという願いが込められています。


ヤントラに見る図形と精神世界のつながり
By N.Manytchkine – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1447781
ヒンドゥー教における「ヤントラ」は曼荼羅と似た幾何学図形で、瞑想や精神的成長を促す目的など使われます。
サンスクリット語で「道具」「制御するもの」という意味があり、マントラ(言霊)を図像化したもの。
瞑想や祈りの際に意識を集中させるための道具や寺院の装飾として用いられる。
ヤントラは直線的で、正方形・円・三角形などが重なり、曼荼羅と同じく内観の道具として機能します。
代表的ヤントラの「シュリ・ヤントラ」では、上向き三角形がシヴァ神、下向き三角形がシャンクティを表わしているとされています。
幾何学の秩序を通じて精神集中を促し、神とつながるための媒体として使われています。

現代に広がる曼荼羅と幾何学の魅力
曼荼羅アートとアートセラピーの関係

曼荼羅アートを描くことは、瞑想と似た効果を持ちます。
繰り返される図形や対称性のある構造に集中することで、心が静まり、自律神経が整うと言われています。
これはアートセラピーとしても注目される理由の一つです。
近年では、精神的ケアやストレス緩和のツールとしても活用されています。

教育・アート活動への応用

近年、ワークショップや学校教育などで曼荼羅アートが取り入れられています。
幾何学的な感覚と創造力を養いながら、集中力やリラックス効果も期待できます。
特に子どもたちの創造力育成に役立つとされています。
自由に色を選び、図形を組み合わせる経験は、論理的思考と感性の両方を育てる貴重な学びとなります。

研究に見る曼荼羅と幾何学の進化
生成AIで描いた曼荼羅アート
曼荼羅は伝統的な宗教的用途にとどまらず、現代アートや科学的研究の対象にもなっています。
特に幾何学的構造に注目した作品展示や、数学・心理学的な視点からの研究も進んでいます。
コンピューターを用いたデジタル曼荼羅の制作や、AIを活用した生成アートとしての曼荼羅も登場し、今後さらに多様な表現が期待されます。
研究から見えてきた曼荼羅と幾何学模様の新たな可能性
曼荼羅や幾何学模様はアートや宗教だけでなく、科学・心理学・テクノロジーの分野でも注目されています。
研究成果からは、曼荼羅が私たちの心や脳、教育に与えるさまざまな影響が明らかになってきました。
曼荼羅の塗り絵中にアルファ波やシータ波が優位になるなど、リラックス状態が科学的に確認されています。
幾何学模様の作図によって空間認識力や創造性が高まり、教育現場や高齢者支援にも応用されています。
AIやVRを使った曼荼羅生成も進んでおり、個人に最適化された癒し体験を提供できる技術も登場しています。
曼荼羅そして曼荼羅アートは、「見る」「描く」「感じる」ことを通して私たちの内面と向き合うための道具であり、科学的にもその価値が再認識されているのです。

まとめ
※ヤントラとは、サンスクリット語で「道具」「制御するもの」という意味があり、マントラ(言霊)を図像化したもの