
曼荼羅(マンダラ)は、古代インドやチベット仏教において修行や瞑想のために用いられてきた神聖な図形です。
中心から外へと広がる幾何学的な模様は、眺めているだけで心を落ち着け、深い集中へと導きます。
現代では「曼荼羅アート」として表現方法が広がり、心が整うツールとして注目されています。
とくに、曼荼羅を使った瞑想には2つの方法があり、ひとつは模様を見つめる「観る瞑想」、もうひとつは描くこと自体に集中する「描く瞑想」です。
どちらも誰にでも簡単に実践でき、リラックス効果やストレス軽減、マインドフルネス効果、さらには自己洞察や癒しにつながるとされています。

曼荼羅アーティストの大迫弘美です。
この記事では、曼荼羅アートと瞑想の関係、観る瞑想と描く瞑想のやり方、日常に取り入れるコツや効果などをまとめています。
曼荼羅や瞑想に興味がある方はもちろん、ストレス対策や心を整える方法を探している方におすすめの内容です。
この記事で分かること
曼荼羅アートが心を整える理由
描く瞑想と観る瞑想との違い
曼荼羅アートを使った瞑想の効果
観る瞑想と描く瞑想の始め方
ペンで描く曼荼羅アートの始め方
曼荼羅アートと瞑想の関係
曼荼羅とは?幾何学模様が心を整える理由

曼荼羅(マンダラ)は、サンスクリット語で「円」や「中心」を意味します。
一見すると複雑な模様の集合体ですが、中心から外へと秩序正しく広がる構造を持っています。
人は秩序や対称性に無意識的に安心感を覚えるため、曼荼羅を眺めているだけで自然と気持ちが落ち着くのです。
現代心理学の父とも呼ばれるカール・ユングは、ノートに円形の図を描き続けていた時期がありました。
やがてその図が、密教やチベット仏教での曼荼羅に似ていることに気づきます。
ユングはのちに「曼荼羅は自己の統合を象徴する」と述べています。
つまり、人は内面に不安定さを感じたときに図形を並べて描くことで、みずから心の安定を図るのです。
中心から外へと秩序正しく広がる構造(曼荼羅構造)は、私たちの心の在り方そのものなのです。

瞑想に曼荼羅が使われてきた歴史的背景
-Wikimedia Commons/File:Hevajra_Mandala.jpg
曼荼羅は古代インドの修行文化の中で生まれ、仏教とともにアジア各地へ広がりました。
特にチベット仏教では、曼荼羅を瞑想に取り入れる伝統があります。
僧侶たちは曼荼羅を見て、自分自身を宇宙や仏の世界と一体化させる修行を行ってきました。
また、砂で描かれる「砂曼荼羅」は、完成と同時に壊されることで「無常」を表します。
この一連のプロセス自体が深い瞑想であり、観る者の心にも大きなインパクトを与えるのです。
こうした歴史からも、曼荼羅が「ただの美しい絵」ではなく「精神を整えるツール」として扱われてきたことがわかります。

「観る瞑想」と「描く瞑想」の違い
曼荼羅アートを使った瞑想には大きく分けて「観る瞑想」と「描く瞑想」の2つの方法があります。
観る瞑想:曼荼羅をじっと見つめることで、呼吸や意識を整える方法。

完成した作品を静かに眺めるだけなので、誰でもすぐに始められます。
目に留まった作品の中心に視線を合わせて呼吸を整えるだけで、自然と心が落ち着き、余計な思考が静まります。
惹かれる作品のタイトルや使われている色の意味に、今取り組むべき課題(テーマ)が表れていることがあります。
描く瞑想:模様や色を描く過程そのものを瞑想とする方法。

みずから作品を完成させていく瞑想法です。
点や線をひとつひとつ重ねながら模様を描いているうちに、選んだ色や形にその瞬間の心境が反映されていきます。
自分自身を表現する楽しさや解放感を味わえるのも魅力的です。
単純な作業の繰り返しが、没入感を生み出し、深い集中と安らぎを体感できます。

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「観る瞑想」と「描く瞑想」のどちらにも心を癒して内面を整える効果があります。
静かにリラックスしたいときは「観る瞑想」、自己表現と合わせて楽しみたいときや心のモヤモヤが溜まっていると感じる時には「描く瞑想」がおススメです。
曼荼羅アート瞑想の効果
リラックス効果とストレス軽減

仕事や家庭でストレスを抱えているとき、頭の中は絶えず考えごとでいっぱいです。
そんなときに曼荼羅アートに集中すると、自然と雑念が消え「今この瞬間」へと意識を戻すことができます。
曼荼羅アートは、日常と少し距離をとって今の自分に集中するサポートをしてくれるのです。
これは現代的なマインドフルネス瞑想と同じ効果で、短時間でもストレスを和らげることが可能です。

その効果は、たった一枚の小さな作品でも同じです。
頭のざわめきを静めたいとき、「観る瞑想」がリセットしてくれるのです。
集中力を高めるマインドフルネス効果

描く瞑想は特に「集中力」を高める効果が期待できます。
点や細い線を繰り返し描いたり色を選んで塗り重ねたりするうちに、自然と余計な思考が消え「フロー状態」に入ります。
時間を忘れるほど没入できることがこの描く瞑想の大きな魅力です。
実際に、多くの人が「描いていたらあっという間に2時間経っていた」「描き終えたら頭がスッキリした」と体験談を語っています。
これはまさに、瞑想とアートが融合した体験なのです。

自己洞察と内面の癒しにつながる理由

曼荼羅アートは自分の無意識を映し出す「心の鏡」のような存在です。
どんな模様を描くか、どんな色を選ぶかは、そのときの感情や状態によって変わります。
例えば、落ち着いているときは淡い色を選びやすく、エネルギーが高まっているときは強い赤やオレンジに自然と目が行きます。
完成した作品を見返すと「自分は今こういう気持ちだったんだ」と気づけることも多いのです。
また、展示しているどの作品に惹かれるかで今の自分に気づくこともできます。
「気になった作品に近づき、タイトルを見た時にハッとした」と、感想をいただいたことがあります。
人は無意識に今の自分にとって必要なものを選ぶ能力を持っています。
今描きたい・観たいと思う曼荼羅アートが、今の自分を投影しているのです。

観る瞑想の始め方
曼荼羅アートを使った「視覚集中」のステップ

自宅でも出来る「観る瞑想」のやり方です。
集中して取り組みたいことがあるときにやってみると効果的です。
- 静かで落ち着ける場所に座る
- 曼荼羅アートを正面に置く(紙やデジタル画像でも可)
- 背筋を軽く伸ばし、自然な呼吸を意識する
- 中心を見つめる
- 軽く目を閉じ自分に意識をむける
- 4と5を繰り返し、瞑想を続ける

呼吸と組み合わせる観る瞑想の方法

観る瞑想に呼吸を組み合わせると効果が倍増します。
吸うときと吐くときにそれぞれ以下のようにイメージするといいでしょう。
- 息を吸うとき:
・曼荼羅アートのエネルギーが自分に広がる
・エネルギーが身体の中心から広がっていく
・一つひとつの細胞が満たされていく など - 息を吐くとき:
・不要なものが外に流れ出る
・緊張がほどけていく
・心が解放される など
こうしたイメージを持つことで、心と体がより調和していきます。
初心者が始めやすい実践ポイント
一日の始まりや終わりにやってみることで、日々の活力になりモヤモヤを持ち越さずリセットすることができます。
生活リズムに取り入れると、始めやすく続けやすくなります。
- 1日3分から始める
- PC作業前に
- リラックス音楽を流しながら
- アロマオイルを焚きながら
- 10時や15時などの休憩時間に
- 寝る前に
最初は短時間で構いません。継続することが大切です。
描く瞑想の始め方
曼荼羅アートの種類

曼荼羅アートは様々な画材で描かれ、表現されています。
- パステル
- 絵の具
- 色鉛筆
- 樹脂
- 糸
- ペン など
中心から幾何学模様が規則的に描かれていれば、どのような画材・素材でも「曼荼羅アート」なのです。
自分自身がやってみたいと思う表現方法を選んでみましょう。
手軽に始められる曼荼羅塗り絵

様々な表現方法がある中で、比較的始めやすいのは「曼荼羅塗り絵」です。
「曼荼羅塗り絵 本」で検索すると本を見つけることができますし、「曼荼羅塗り絵 フリー画像」でもたくさん出てきます。
本やダウンロードした画像に、色鉛筆などで色付けして描く瞑想を体験することができます。
色鉛筆などの画材も100均にあるもので充分なので、まずは描く瞑想とはどんなものかを知りたい方にはお手軽に始められる方法です。
ペンで描く曼荼羅アートの始め方

黒画用紙にカラーペンを使って描く曼荼羅アートは、黒画用紙だからこその煌めきが表現できるアートです。
下絵に沿って、点・線・丸を組み合わせて描きます。
ひたすら点を描く…などという単純な作業が、より深い瞑想状態に誘います。
初めての方は、道具などがそろっているワークショップに参加して体験してみることをお勧めします。
👉 関連リンク:
ペンで描く曼荼羅アートQ&A:よくある質問
〇絵が苦手でも大丈夫ですか?
まったく問題ありません。曼荼羅アートは「うまさ」を競うものではなく「過程」を味わうものです。
また、それぞれの個性を認め合えるのも曼荼羅アートの特徴です。
〇どのくらい続けると効果がありますか?
個人差はありますが、ワークショップでの約90分間でも「スッキリ感」を体感することができます。
〇子どもでもできますか?
はい。ワークショップは90分ほど集中できる人ならどなたでも参加できます。
実際には小学校高学年の子が参加されています。
まとめ
曼荼羅アートは中心から外へと秩序正しく広がる構造である。 人は秩序や対称性に無意識的に安心感を覚えるため、曼荼羅を眺めているだけで自然と気持ちが落ち着く。 心理学の父とも呼ばれるカール・ユングは、ノートに円形の図を描き続けた時期があり、その図が、密教やチベット仏教での曼荼羅に似ていることに気づいた。 ユングはのちに「曼荼羅は自己の統合を象徴する」と述べ、人は内面に不安定さを感じたときに図形を並べて描くことで、みずから心の安定を図ると説いた。 観る瞑想とは: 描く瞑想とは: 静かにリラックスしたいときは「観る瞑想」、心のモヤモヤが溜まっていると感じる時には「描く瞑想」がおススメ。 リラックス効果とストレス軽減: 集中力を高めるマインドフルネス効果: 自己洞察と内面の癒しにつながる理由:
・完成した作品を静かに眺めること。
・作品の中心に視線を合わせて呼吸を整えると、心が落ち着いて余計な思考が静まる
・みずから作品を完成させていく瞑想法
・選んだ色や形にその瞬間の心境が反映され、それが自己表現や自己解放になる
・単純な作業の繰り返しで深い集中と安らぎを体感できる
・日常から離れ今の自分に集中するサポートになる
・特に描く瞑想は集中力を高める
・繰り返しの作業や色を選び塗り重ねるうちに、余計な思考が消えていく
・時間を忘れて没入できる
・どんな模様や色を選ぶかは、その時の感情や状態によって変わるため、曼荼羅アートは無意識を映し出す鏡のようなものとなる
・人は無意識に今の自分にとって必要なものを選んでいる